同一労働同一賃金が適用されるケースと適用されないケース

同一労働同一賃金は、すでに導入されている企業もあれば、これからという企業もあります。導入にあたり、同一労働同一賃金が適用されるケースとされないケースがありますが、どのような場合であれば適用になるのかわからないという方もいるはずです。例を出して、ケース毎に確認していきましょう。

同一賃金同一労働が適用される場合

施策が導入されると、従来と異なり雇用形態や勤続年数で賃金の決定がされなくなります。経歴や能力で決まり、仕事内容が同じであれば、雇用形態が違っても同じ賃金が支払われるのです。
給与以外にも、各種手当や福利厚生も適用されます。会社への貢献が同一であれば昇給賞与が認められ、それに対しての支給も行われるでしょう。そのため、非正規社員らのモチベーションが向上しますし、会社離れを防ぐことができる可能性もあります。
一方で、苦労して会社に就職した正社員の不満も募る可能性も孕んでいます。社員への通達をしっかりと行い、双方が理解・納得するためには導入前に説明を行う必要があるでしょう。

同一賃金同一労働が適用されない場合

同一賃金同一労働が導入されたからといって、すべて同じ賃金が支払われるわけではありません。
例えば、住宅手当が正社員では支給されるが、非正規雇用の従業員には支払われないケースもあります。この話だけを聞けば、違反に当たるのでは? と感じてしまう人もいます。しかし、住居手当を支給するという経緯が、「正社員は転勤する可能性があり、転勤する者に対する住居費の負担軽減のため」だとすれば非正規社員で転勤しない場合は適用されないのです。

同一賃金同一労働は双方の理解が必要

正社員、非正規社員の理解だけではなく、企業と従業員双方の理解が必要になります。トラブルを避けるためにも、導入にあたって入念な説明が求められます。

同一労働同一賃金で正社員にはどんなメリットがある?

導入がすでに開始されている企業もあれば、近々導入予定の企業もある、同一労働同一賃金ですが、正社員にとってのメリットを気にしている方もいるかもしれません。特に苦労して企業に就職した人にとっては、デメリットしかないのかも? と感じている方もいるでしょう。同一労働同一賃金が導入されることで考えられる正社員のメリットについて見ていきましょう。

同一労働同一賃金のメリット:年功序列

同一労働同一賃金は、雇用形態や勤続年数に関係なく、労働内容に基づいた給与になります。そのため、勤続年数が長いだけで会社に貢献していない社員の給与も変わってくる可能性があるのです。
また、同じ年に入社した同期がいたとしても、それよりも業績をあげていたり、仕事に真剣に打ち込み会社に貢献した場合、給料が上がる見込みもあるでしょう。
そのため、施策が導入されたからといって、デメリットばかりではないと言えそうです。非正規社員と同額の賃金になりたくないと考えるのであれば、仕事で成果を上げ、会社に認められると賃金が上がるかもしれません。また、この施策が導入されることによって、企業側も個人の能力や業績をしっかりと把握するようになるでしょう。それにより、今まで正当に評価されなかった場合、改善が見込めるはずです。

同一労働同一賃金のメリット:男女格差

正社員で働いている人のなかには、女性であるからといった理由で、同年代の男性と同様の待遇をされていない人もいるかもしれません。年々、働き方改革によって改善されてきたとは言え、未だ名残がある企業もあるはずです。同一労働同一賃金が導入されることで、様々な待遇が見直され、男女格差もさらに少なくなることが考えられます。

同一労働同一賃金によって正社員にもメリットはある

上述の通り、施策が導入されることで、正社員にとってもメリットは存在します。非正規雇用の人たちばかりが得をするのでは? と思っている方もいるかもしれませんが、年功序列が無くなったり、男女格差が少なくなったりするでしょう。

同一労働同一賃金に関する相談窓口について

すでに開始されている企業もある、同一労働同一賃金ですが、困りごとや相談があった場合はどうすれば良いのかわからないという方もいるでしょう。同一労働同一賃金の相談窓口はどのようなものがあるのでしょうか。

 

厚生労働省の窓口

 

厚生労働省では、同一労働同一賃金に関連するガイドラインや、特集ページが公開されています。この施策についての詳細が記載されているため、しっかりと目を通せば理解できる可能性もあります。

また、厚生労働省は働き方改革の無料相談窓口を開設しています。全国に窓口があるとはいえ、主要都市に集中してしまいます。遠いと感じてしまう人もいるかもしれませんが、ここだけではなく、労働局や労働基準監督署でも、同様に相談支援を行なっているため、比較的近い場所で相談ができるでしょう。

 

内容を詳しく知りたいなら厚労省以外も◎

 

厚生労働省の資料や窓口の相談では、なかなか理解できないという方も少なくありません。一度資料を読んだだけでは理解できない人もいるでしょう。記載方法が難しいため、すぐにわかるという人も少ないはずです。そのようなときは、民間のコンサルタントへ依頼して詳しく知ることができます。

コンサルタントであれば同一労働同一賃金をもっと噛み砕いてわかりやすく説明してくれますし、必要なリスクヘッジについてもアドバイスを受けることができます。

特にこれから同一賃金同一労働を導入する企業は事前に知っておくべきことが多く存在します。厚生労働省の資料だけでは、深く理解できない場合、トラブルを招きかねません。そうなる前にコンサルタントへ依頼し、しっかりとリスクヘッジを行なっておくと良いでしょう。

 

施策を理解してトラブル回避

 

施策の詳細を理解していないと、トラブルに繋がります。目前に迫った導入時期に間に合うようにしっかりと対策を練っておきましょう。

同一労働同一賃金を無視した場合の罰則について

同一労働同一賃金は、大手であればすでに実施されており、中小企業は2021年から開始されます。これは、名称通り、同一の仕事内容であれば、同じ賃金にするという考え方であり、主要な先進国ではこの考え方の通り実施されています。

同一労働同一賃金を無視した場合の罰則はいかなるものなのか、気になる会社や個人の方もいるかもしれません。どのようなものがあるのかみてみましょう。

 

明確な罰則はまだない

 

同一労働同一賃金を無視した場合の罰則について、現状ないとされています。そのため、無視してしまう企業が出てくるのでは? と考えてしまう人もいるかもしれません。罰則がないだけであって、個人からの訴訟や世間からの信頼を失ってしまう可能性が高くなります。

罰則がないからといって、企業側が利益になることはなく、逆に無視してしまうと罰則以上のリスクを負ってしまう可能性があるのです。

 

個人から損害賠償請求がある

 

同一労働同一賃金を無視した場合、行政からの罰則がない分、労働者個人からの損害賠償請求が発生したり、メディアから世間へ広まったりするケースがあります。

損害賠償請求となれば、それに費やす時間も必要になります。また、メディアから広まってしまうと、信用を失ってしまう場合が考えられます。

罰則よりも大きなものを失ってしまうかもしれません。訴訟問題まで発展してしまうと、対外的にも問題になるため、そうならないためにしっかりとした対策をたて、同一労働同一賃金が該当するケースとしないケースをわかりやすく明記しておく必要があります。

 

リスクヘッジは早めに

 

様々な事態を想定して対策を講じておくことが大切です。企業としては、施策に乗っ取っているつもりでも労働者がそうだと感じなかったがために訴訟問題に発展することも考えられます。企業、労働者どちらもわかるようにしておくと良いでしょう。

同一労働同一賃金にはどのようなメリットがあるのか

同一労働同一賃金のメリットを考えてみましょう。
同一労働同一賃金で最も恩恵をうけるのは非正規雇用者だけのように見えますが、実際にはすべての関係者にメリットがあると考えられています。

非正規雇用者のメリット
一番同一労働同一賃金の恩恵を受けているのはやはり非正規雇用者でしょう。
その最たるメリットとして、所得が増える可能性が非常に高くなります。
それに伴い生活面での苦労が大幅に減りますし、正規雇用者と同じく頑張れば昇給や賞与のチャンスも生まれます。
そのため、仕事のモチベーションが向上しやすくなり、更に正規雇用のチャンスも生まれやすくなります。
正規雇用者のメリット
正規雇用者にとっても、同一労働同一賃金はメリットが多く生まれます。
給与の支払いに人種や年齢、性別が関係なくなるため、年功序列や男女格差、人種格差といった習慣がなくなります。
そのため、若くして出世がしやすくなりますし、高齢者の再雇用でも実力次第で高待遇のポストで働くことができます。
更に、外国人労働者はまっとうな賃金を得られ、女性もより進出しやすくなるのです。
このように、同一労働同一賃金は実力や実績に応じた評価がされやすくなるため、不当な人事が減りやすくなるのです。
事業主のメリット
同一労働同一賃金が導入されることにより、事業主側したら出費が増えるのでデメリットにしかならないという考えもありますが、きちんとメリットは存在します。
まず第一に、非正規雇用者のモチベーションアップや正規雇用者の実力本位の評価により、会社全体のモチベーションアップや、優秀な人材の確保に繋がります。
実力次第で高待遇というのは、優秀で野心あふれる社員にとってはまさに理想であり、健全な競争が期待できるのです。
それにより、企業は成長しやすくなります。

2019年4月現在の同一労働同一賃金の現状

同一労働同一賃金は大企業だと2020年4月に、中小企業では2021年4月に適用される見通しですが、2019年4月現在、多くの大企業がまだ対応方針が決まっていないとされています。
そんな同一労働同一賃金の現状について考えてみましょう。
なぜ方針が定まらないか
大企業の方針が定まらない理由は、同一労働同一賃金導入によってどのようなコストが生じ、どのようなリスクが有るかということがまだ完全に不明だからだということが考えられます。
別項目でも説明しましたが、同一労働同一賃金導入によって企業が抱えるリスクに、コストの増加と社員のモチベーションがあります。
中でも大企業が抱える問題は、コストの増加でしょう。
大企業では、多くの企業が非正規雇用者を雇っているのが現状です。
そのため、同一労働同一賃金が施行された場合、非正規雇用者を雇っていればいるほどコストは急激に膨れ上がります。
現に、某人材サービス企業の調査によれば、大企業が同一労働同一賃金導入における課題として基本給や賞与面が最も多く挙げられていました。
海外基準と国内基準
また、同一労働同一賃金そのものに対してもやはりまだ見通しが甘いのではないかという声もあります。
冒頭でも説明しましたが、国内の非正規雇用者と正規雇用者の賃金格差は海外の非正規雇用者と正規雇用者のそれと比べると日本の格差は海外よりも大きいというデータがありますが、数字だけではなく実情を見ると、より様々な違いが見えてきます。
海外では確かに地域格差は少ないですが、勤務時間の自由度や1時間あたりの給料換算などを比較すると、一概に日本での賃金格差がひどいというわけではないという指摘もあります。
今後同一労働同一賃金がどう変わり、国内ではどのように変化するのか、まだまだ課題は多いようです。

同一労働同一賃金の問題にせまる

同一労働同一賃金には多数のメリットが有り、企業成長のきっかけにもなります。
しかし、それだけではありません。
同一労働同一賃金には問題点もいくつかあり、非正規雇用者、正規雇用者、事業主それぞれにある程度のリスクが発生するのです。
それぞれのリスクを見てみましょう
非正規雇用者が抱えるリスク
一見非正規雇用者にとってはメリットだらけに思える同一労働同一賃金ですが、きちんと問題点もあります。
それは、仕事の評価のシビア化や非正規雇用者感の賃金格差です。
正規雇用者並みの給与や待遇を支払うのですから、当然非正規雇用車に求められる仕事のハードルも上昇します。
そのため、非正規雇用者だからと甘くみられていた評価が一転してシビアになり、一定したレベルに達していない場合は切られる可能性が浮上するのです。
よって、実力がより求められる環境になり、競争率がアップしやすくなるのです。
正規雇用者が抱えるリスク
正規雇用者画家開けるリスクの最たるものが、給料の低下です。
非正規雇用者の給料をアップしなければならないとしたら、均等化のために正規雇用者の給料が減る可能性は極めて高いです。
更に非正規雇用者と同じく実力で評価されるため、一定のレベルに達していないと失業することも考えられます。
特に高齢で失業すると、再雇用の確率は若者よりも低くなりやすいため、非常にリスクが高くなるのです。
事業主が抱えるリスク
人件費の増大や、失業率アップに伴う人手不足は従業員のモチベーションダウンに繋がる可能性があります。
非正規雇用者が多ければその分支払いは増えてしまいますし、その分のコストを賄うために正規雇用者の給料を減らせば不満や退職者が続出します。
結果、優秀な人材が流出する可能性もあるため、予め対策を練らなければ会社が大打撃を受ける可能性があります。